まじろ帖

日々のこと。

見逃さずに

歩いていたら教会にたどり着いた。

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人が全然いなくて静かで綺麗だ。
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ユークと二人でぼーっと天井を見上げていたら一人のおじいさんに声をかけられた。
「興味があるかい?」
と多分聞かれている。聞かれているんだろうな、とはわかるんだけど上手に答えられなくて
「ジュ ヌ パルレ パ フランセ」
とだけ咄嗟に言う。おじいさんは、あー、という顔をして、それでも続けて
「オングレ?」
と聞いてくれた。
「ウィ」
と頷くと、おじいさんは手招きをして私たちをパンフレット置き場まで連れて行き、英語のパンフレットを選んでくれて、
「英語はあまり話せない…」
と言いながら、この教会のことを教えてくれた。

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おじいさんがこの教会はとても新しいよ、と言うのでへーと思ったらそれでも1800年代のことだった。
「見てごらん」
と指差してくれたパネルを見ると、絵の中の教会には高い塔が描かれている。
「当時、この計画で建築は進むはずだったんだ」
と、おじいさんはついこの間のことのように話す。
「だけど、途中で頓挫した。やっぱりこんな高い塔は作れないと断られてしまったんだよ」
とおじいさんは、とてつもなく残念そうな顔で言った。話の途中、おじいさんの英語と私たちのフランス語の理解力に限界を感じ、おじいさんは近くにいた女のひとに無理やり英語の通訳を頼んだ。駆り出された女のひとは、仕方ないわねというようにぐるりと目を動かし、それから
「ファミリーツリーのステンドグラスが奥にあるの。ぜひ見てみて。とても綺麗よ」
と教えてくれた。

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深い、美しい色をしたステンドグラスを私たちは見逃さずに済んだ。