まじろ帖

日々のこと。

旅行

モモに

松本に電車で行くのはそういえば初めてのことだ。 八王子からあずさ7号に乗る。 今回の旅のお供本は、ミヒャエル・エンデのモモ。 時間泥棒ときいても子供の頃はぴんと来なかったけれど、今はモモが近くにいてくれたらいいのに、と思う。 モモになりたかった…

骨も肉も

帰る場所を少しずつどこにもなくしている、というのがその時私が感じているたったひとつのことだった。 それに気がついてはいたけれど、私は何もしなかった。そのまま緊張がピークに達した時、曖昧さが人も自分も傷つけて全部をざらりざらりとすり潰していく…

〆は

飲んだあとの〆はカレーうどんだと香川の人が言うので連れて行ってもらった鶴丸。 熱くて驚く。 友達夫婦と夜の高松にいるのは、本当に私かな。 火傷した口の中がひりひりするので「これは、私の痛み」と口に出してみてホテルの部屋までの廊下を歩く。

渦の上

鳴門海峡に連れて行ってもらった。 渦の上に立つ。 「私がもし地獄に堕ちる人間だったら、このガラスが突然パッてなくなったりするかな?」 そんなことを言おうとして馬鹿みたいだと思い直し口をつぐむ。 青と白と緑が、足の下で強くうねる。 幻滅させてごめ…

古めかしいアブサン

香川に来た。もう5年くらいの付き合いになる友達に会いに。妹には赤ちゃんが生まれた。お姉ちゃんとその旦那さんと鉄板焼きのおいしいお店に行き、ビールもワインもたくさん飲んで、ウニとトリュフのオムレツを食べたりからすみと水菜の焼きそばを食べたり…

「羊の牧場だって。寄ってみようか」 とユークが道端の看板を見つけてくれた。 牛とか羊とか馬とかが、私は好きだ。 犬も猫もモルモットも狼もフクロウも。 まぁつまり生き物は大抵なんでも。そういうわけで羊の牧場にはもちろん寄りたくなった。でも出てき…

牛乳

安曇野の牧場で牛乳を飲む。 ユークはこういうときソフトクリームを食べるけれど、私は牛乳がいい。こっくりしていておいしかった。 二日この牧場に通って二日ともこの牛乳を飲んだ。炎天下で牛乳なんて変だけど、おいしいからすいすい飲んでしまう。

仙人

森の中にカフェがある。 静かでメニューには何種類ものコーヒーがあり、本棚には古い本がびっしりと並んでいる。こういうのは、どんな生活なんだろう。 お湯をわかし、豆を挽き、ケーキを切り分けて、次にドアを開ける人のことをちらりと見て言葉少なに出迎…

まるも

朝食のあと、隣の喫茶まるもでコーヒーを飲 む。行きたいパン屋さんとジャム屋さんと雑貨屋さんが開くのを待って、それから八百屋さんにワッサーを買いに行くのだ。

小さなバー

道の外れには立ち飲みバーがあり、夕食のお店でどうにも飲み足りなかった私は喜び勇んでその小さなバーのドアを押したのだった。

去年の8月の

ちょうど一年前も同じように松本で過ごす休暇だった。 「去年、ここを通ったときは天気が悪かったんだよ。雨じゃないけど、曇ってた」 とユークが言う。 今日は、晴天。 よくそんなことを覚えている、と思ったけれど、私は一昨年の夏に松本の気に入っている…

マネージャー

燦々と陽がそそぐ公園で、男の子達は楽しそうにバスケをする。バスケに全然詳しくない私にさえ、彼らがあまり上手でないということがわかり、それでも目が離せずにじっと見ていた。マネージャーみたいな気持ちだ。

感無量

パリのオーナーの本店に行く。お店の内装も並ぶパンもみんなとても綺麗で、オーナーが「イラッシャイマセー!」と覚えた日本語を披露してくれたことも、可愛くて、なんだか感無量だ。

お茶

パリの友達に会う。 ユークはその辺をぷらぷらしてくると言うので、二時間後に待ち合わせ。ラデュレでお茶をする。 ちゃんとフランス語を話せるかな、とか英語もあやふやだったらどうしよう、とか。ドキドキしながらのお茶だ。

ちびちびしていても

サッカーの試合が観たいというユークに付き合って、夕食の後に試合を放送しているカフェかバーを探して歩く。「生ビールを」 とカウンターで注文し、席につくと私にはもうほとんどすることがない。サッカーはユークが好きだからなんとなくいつも付き合って見…

離せない

可愛いというよりは怖くて、目が離せない。この通りを歩く時はちょっと緊張してしまう。 絵がなくなったりはしないだろうけれど、たとえばちょっと顔の向きが変わったりはするかもしれないから。

誰も彼もの不在

なかなか暗くならないというのは、不思議だ。光の粒が、夕方の冷たくなり始めた空気に混じり、少しずつ本当に少しずつ、空を紺色に塗り替えていく。その光景を広場の端のテーブルに座って、ビールを飲みながら眺めていると、ふいに世界中に誰ももう私が知っ…

知らない物語

初めての村でもひょいひょい歩いて進んでいける。スニーカーの履き心地が良くて、リュックには水がきちんと入っていてすれ違う人に挨拶さえ出来ればたいていはOKだ。ここはどんな村? どんな人がいるのかな? おいしいワインはあるのかな?そんな気持ちで村…

時計を

バスは一時間に2本、たぶん来る。 忘れられていなければ。 山の真ん中にひっそりとたつ古い朽ちたような教会とそれを囲むようにしてつくられた村だ。バス停は高いところにあるので、村を見下ろすことが出来る。 「こういうところに住めるかな?」 と話す。…

可愛い顔

歩いている途中、いろんなものが目にはいる。 植物の色も違うし、建物は古くごつごつと冷たい石だ。パン屋さんはどこも覗いて匂いを嗅いでみたい。マルシェに並ぶ野菜の明るい赤、緑、黄色。一本裏の通りでこんな可愛い顔を見つけて大笑いしたりもできるけれ…

リゾット

マルセイユの港には、たくさんのレストランがひしめき合っている。どこのレストランも店の前に看板を出し、魅力的な料理やデザートやお酒を書き散らす。マルセイユといえば、ブイヤベース。 ところが、ブイヤベースがあまり好きではない私は、読みにくいフラ…

等しく距離を

駅から教会のある丘までどんなに短く見積もったって40分は歩いた。しかも最後はこれでもかというほどの坂道を登った。サンフランシスコかリスボンか長崎かというような、日のあたる静かで埃っぽく、延々と続く坂道を。強い風が吹く、海も街も一望できる圧倒…

マルセイユ

マルセイユまでのバスがあるというので、乗ってみることにした。 マルセイユと聞くと治安が悪いとか危険だとかすぐに言われるので、内心ドキドキしていたけれど、行ってみたらそこはとても面白そうな街だった。駅について、階段の上から街を眺め、あの遠くの…

天気

エクスアンプロヴァンスの天気は良い。 セザンヌが生涯愛し、描き続けたサンヴィクトワール山は今日も綺麗だ。

混ぜ合わせた

23時まで営業している食料品店があって、そこに行けば缶のパナシェを買うことが出来る。ビールを何かで割った飲み物というのがけっこう好きで、例えば韓国料理屋で、ビールとマッコリを頼んで勝手に割って飲んだりする。パナシェはビールとレモネードを合わ…

ピーマン

ピーマンハンバーガー。メニューを見てどんなハンバーガーだろうと思ったら、なかなかごついのがやって来た。

絶望という名前

絶望という名前のビールは、南仏らしくないなぁと思う。こんなにからりと晴れてあちこちに清潔なラベンダーやらハーブやらの香りが満ちていて綺麗な街なのに、広場のカフェのビールはデスペラードだなんて、変だな。4日連続で夕方になると同じ店に通い、デ…

映画館

観たかったジャングルブックの実写版がちょうど上映されていたので、ホテルの近くの映画館へ。午前中は6.7ユーロで観ることが出来るので、安いなぁ。子供たちに混じって初フランス映画館を楽しんできた。フランス語吹き替えなので、会話は半分もわかったかど…

味方

電車での長時間移動の強い味方。 ニースからエクスアンプロバンスまでの三時間。本当はちょっと周りの人が話す言葉を聞いていたい気もするけれど、いつも通りの音楽を聴きながら流れていく見慣れない景色を見るのも好きだ。この世界史の本は、面白い。

ニースから電車で20分ほどのアンティーブへ行く。ピカソの美術館があり、旧市街はくるくるといりくんだ道が続く。ピカソの描くアンティーブの海。