まじろ帖

日々のこと。

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ずっと

「じいちゃん、笑って」 と言うと、 「おう」 と答えてにっこりする。 じいちゃんのこの眉をきゅっと寄せた笑いかた、大好き。 「じいちゃん、元気」 と聞くと、 「そうだな」 と頷く。 じいちゃんに聞いてみたいことがたくさんある。 じいちゃんはいつだっ…

宇宙人くらい

エンゾの体はつるりとしていて冷たい。 くるりと器用に小さく丸くなって私のセーターに顔を押し付け「ぶーぶ、ぶーぶ」と音を出す。 犬はこんな声を出さない。 猫は、なんだか宇宙人くらい遠く感じる生き物だ。 でも、せめて彼らに対してだけは、私は清潔で…

一握りの

日々は我慢と寛容と憎しみと一握りの愛で成り立っている。 同じものを食べ、同じ場所で呼吸をし、眠り、繰り返しつかうお箸、コップ、歯ブラシ、石鹸、カミソリ、耳掻き、爪切り、ボールペン、ファイル、印鑑、セーターやシャツや靴下。見たい番組、聴きたい…

大事なこと

やけに言葉が胸に刺さる。 大事なものは大事にしなければいけないんだって、そんなのは当たり前のことなのに、耳たぶに新しくひとつ開いた穴が痛むので、まるでとてつもなく難しいことを宿題に出されたような気になってしまう。 その病院ではヘリックスは開…

夢が詰まったみたい

デパートのカフェでお茶を飲んでいたら、ガラスの向こうにもう何年も会っていなかった友達が立っていて、目があって「え?」と思ったら「じろちゃん」と声をかけてくれた。 こんな偶然てあるんだね。 今度またゆっくり会おう、と話して別れる。 引き戻される…

平日のお昼

火曜日に香川で別れた友達が昨日から今度は東京へ。 ポテトクリームを食べに行ってきた。 「平日のお昼にワインなんて幸せだね」 と言って背の高い友達が隣で笑う。

骨も肉も

帰る場所を少しずつどこにもなくしている、というのがその時私が感じているたったひとつのことだった。 それに気がついてはいたけれど、私は何もしなかった。そのまま緊張がピークに達した時、曖昧さが人も自分も傷つけて全部をざらりざらりとすり潰していく…

〆は

飲んだあとの〆はカレーうどんだと香川の人が言うので連れて行ってもらった鶴丸。 熱くて驚く。 友達夫婦と夜の高松にいるのは、本当に私かな。 火傷した口の中がひりひりするので「これは、私の痛み」と口に出してみてホテルの部屋までの廊下を歩く。

渦の上

鳴門海峡に連れて行ってもらった。 渦の上に立つ。 「私がもし地獄に堕ちる人間だったら、このガラスが突然パッてなくなったりするかな?」 そんなことを言おうとして馬鹿みたいだと思い直し口をつぐむ。 青と白と緑が、足の下で強くうねる。 幻滅させてごめ…

古めかしいアブサン

香川に来た。もう5年くらいの付き合いになる友達に会いに。妹には赤ちゃんが生まれた。お姉ちゃんとその旦那さんと鉄板焼きのおいしいお店に行き、ビールもワインもたくさん飲んで、ウニとトリュフのオムレツを食べたりからすみと水菜の焼きそばを食べたり…

柔らかい

おばあちゃんから翡翠の指輪をもらう。 柔らかい緑は、私が一番好きな色。

準備

クリスマスの準備がはじまった。 日に日に外は寒く、体が固くなるのに、温かくて幸せな気持ちは増えていく季節だ。

自分たちだけの

雨が降って寒いので窓を閉めきったままにしておくと、くしゃみが出る。もともと猫アレルギーもちなのに二匹の子猫がやってきたのでちょっと息が苦しい。空気清浄機には「勉強中」という静かなモードがついていて、確かにそれはゴーッと音を立てるよりは遥か…