全部ということ
中古のカメラをひとつ買った。
ちゃんと写るのかはわからないけれど、可愛かったので。
外を歩きながらぱしゃりぱしゃりととりあえず何にでもシャッターを切る。ハーフサイズカメラなので27枚撮りのフィルムは倍の54枚撮れることになるらしい。よくわからないけど。
見たものすべてを記憶に残しておこうなんて欲張りかな。
ふとした時に思い出して喉の奥が詰まるような感覚になる。
でも全部望もうとなんて、私は本当にしていたかな。
冬がもうすぐ終わる晴れた日の午後、離れなければ優しくなれないなんてもったいないと思った。
冷たい空気もすぐそこまで来た春も、分けあいたい。
それが、全部ということか。