17倍の速さ
桜の下で音を立てて開ける桜柄の缶ビールはすがすがしくて、いくらでも飲めてしまう。
公園は一体どこからこんなにたくさん?というくらいに人が多くて、ぎゅうぎゅうにレジャーシートを敷いてみんなそれぞれお弁当を広げたりおやつを食べたりしていて、お花見って子どもの頃の遠足みたいだ。
池にはボートを待つ長蛇の列が出来ていた。
スワンボートは酔うよ、と話す。
私は脚力よりも腕力の方を少し多めに信頼しているんだと思う。
Rが「光の17倍の速さで人の気持ちは変化するんだって」と言った。
じゃあもう何も信じられないと思ったけれど、でもだったら何もかもを信じてもいいんだ。
ピンク色のスワンボートがゴンッと音を立てて別のボートにぶつかるのを眺めながら
「誰かを好きだと思っても17倍の早さで次の瞬間、嫌いになるかもしれないんだね」
と言ったら
「17倍の早さでまた好きになるかもしれない」
とRが言ったので、その考え方はとてもいいと思った。