まじろ帖

日々のこと。

パーティー

誕生日パーティーの後みたいな色とりどりの静けさが路地裏に落ちていた。

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「見て。可愛いね」
とふりかえり、それから午後の空が暗い雲でいっぱいになっていることに気がつく。

パーティーはちょっと疲れるから。
周りがどんなふうに褪せていったのか、ちゃんと見ていたはずなのにどうしても思い出せない。

夜の公園

夜、近所の公園で花火をする。
大きなスーパーの入口の端でごっそりまとめて売られていた安くてカラフルで目を背けたくなるような、花火。

小雨がぱらついてのぼる煙のスピードは遅く、やけに白くはっきりとしていた。
煙はいつまでもその場に残って見えた。

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線香花火に火を点けてじっとしていると
「花火、またしようね」
と上から声がした。
少し離れた河川敷からは打ち上げ花火の音が流れてくる。

出来ることと出来ないこと、
しても良いこととしてはいけないこと、
私の境界線は煙みたいにぼやけてしまう。

「トウモロコシが食べたい」
と言うと、
「もうそろそろ終わりだよ」
と笑われた。
つまらなくなってトウモロコシ!トウモロコシ!と少し大きな声を出す。

夜の公園で。

眼が、

松本に行くときに、迷ったけれど久しぶりにフィルムのカメラを持って行った。

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今、なんとなく撮りたいと思っているものがあって、でもうまく一枚の中におさめられる自信も、そもそも撮る機会も約束もないので、他のものにシャッターを切るのは諦めきれないリハビリのような気持ちだった。

何年か前までは人も景色も動物も目につくものはなんでも撮ったし、人がレンズをぐっと見返す時の眼が、どんな人もみんな良かった。

古いカメラを構えた時の硬くて冷たい重みが好きだった。

今もやっぱり、好きだ。

100円 食べられません

おもちゃカボチャというのを安曇野の牧場で買ってきた。

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「100円 食べられません」
と書いてあって、普段なら食べられないものにあまり興味がないのだけれど、なんとなく。
「秋に向けて色が変わります」
というところにわくわくして。

毎日、じっと見ている。

澄ました笑顔

上野の美術館にポール・スミス展を観に行く。
「暑いし、上野まで一人で行くの大変だし無理かなぁ」
と思っていたら、同僚が誘ってくれて仕事のあとに二人で行ってきた。

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ポール・スミスの頭の中の鮮やかな色、アイディア、好奇心。遊び心がいっぱいでいつもちょっと澄ました笑顔をしている。

彼の集めた絵画や写真が壁いっぱいに展示されている様子は、眺めても眺めてもちっとも飽きない。

「羊の牧場だって。寄ってみようか」
とユークが道端の看板を見つけてくれた。
牛とか羊とか馬とかが、私は好きだ。
犬も猫もモルモットも狼もフクロウも。
まぁつまり生き物は大抵なんでも。

そういうわけで羊の牧場にはもちろん寄りたくなった。

でも出てきたのは、放し飼いの山羊。

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あれ?と思う間もなく山羊はまっすぐ近寄ってきて、静かに立ち上がり、蹄でどーんと私の膝にスタンプを押してくれた。

動物のお医者さん」に出てくるプルプルを思い出して感動したけれど、あれも山羊じゃなくて羊だ。

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可愛かった。
「山羊が飼いたい」
と言うと、ユークは日本語がわからないというような顔で遠くの山を見ていた。

骨だけ

まるも旅館の朝ごはんが好きだ。
魚って上手に食べられない、といつも思っているのがまるで嘘みたいに私の右手はお箸を使いこなして上と下の身をわけ、骨だけをするすると取り外せる。

「見て!」
と自慢してしまうくらいぺろりと食べる。

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ごはんだっておかわりできる。