まじろ帖

日々のこと。

手放して

ありふれた景色を見て、喉の奥がぎゅっとなる。
建ち並ぶ古いアパルトマン。カーテンのない窓から見える高い天井。楽しそうな話し声。音楽。カチャカチャと鳴るお皿やグラス。

この街へ来るようになってからもう何年かが経ち、物珍しさはなくなった。
ここに住んでしまえば楽だろうか。
今もっているものを一度みんな手放して。

怒っているふうに見せなければ、私の中のとうに静まってしまった感情を見透かされるのでは、と思う。
言葉にするのを躊躇う。
一度でも口にしてしまえばもうそれは厳然たる事実だ。

 

 
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