まじろ帖

日々のこと。

ピンクの壁

昔ユークが住んでいたところの近所に鮮やかなピンクの壁のお店があった。夕方になるとお店の前にちょっと怖そうなおじさんが立ち、ほとんど人通りのない道をぶらりぶらりと眺めていた。時々、おじさんがユークに会釈をするので「ユーク、ここのお客さんなの?」と聞くと「毎晩この道を通るからおじさんと顔見知りなだけ。呼び込みされたことなんてないよ」と呆れ顔をしていた。おじさんの娘は小学生なんだそうだ。

ある日、お店のチカチカした看板もおじさんもみんな突然いなくなってしまった。お風呂の匂いもしなくなった。働いていた女の子たちを見たことがないのでよくわからないけれど、きっとぷりぷり怒りながら一列に並んでここから出ていったと思う。アヒルとか鴨の子どもたちみたいに。

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引っ越してだいぶ経つのでもうこの通りを歩くこともないのだけれど、今は、建物も取り壊されてしまった。

すごく可愛かったのに。