読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

まじろ帖

日々のこと。

あの子達

今年もフランスへ行く季節がきた。

今年は猫たちが家に来たので、置いていくのが心配で、長い旅行に行くのは気が引けるけれど、彼女たちは私のママにとてもなついているので、案外大丈夫なのだろう。私以外の誰も彼もが「あの子達は大丈夫よ。いってらっしゃい」と言う。

f:id:urimajiro_o:20170426102943j:image

 生まれ育った場所以外を好きでそこへ行くことを「帰ってきた」と表現するのがあまり好きじゃないけれど、エクスアンプロヴァンスのあの光があふれる泉の街のことを思い出すと、帰るという言葉は正しいような気がしてしまう。

歩く

今年も駐車場にミニチュア箱庭が出来ていた。

f:id:urimajiro_o:20170406170319j:image

可愛い。

桜が咲いたので、いつもよりも少し多く歩く。

雨の日のタクシーが苦手だけれど、でも好きなもののうちのひとつだとも思う。窓につく細かな水滴を見るのが楽しいから。

f:id:urimajiro_o:20170314111428j:image

つぷつぷつぷ、と音を立ててまるで炭酸の中にいるみたいだ。

季節には

「いいよ」って許したり許されたり、子供の頃はすごく簡単なことだったのに、歳を重ねるごとにそれがどんどん出来なくなっていって、頭が固くなってしまったのかな。体が重くなってしまったのかな。

f:id:urimajiro_o:20170313112704j:image

いい空を見てぼんやりとする。

つまらなくなるね、ってそんな簡単な言葉さえも飲み込んで。

「春がくれば」といつも思うけれど、そうすれば生まれ変わったみたいになれるんじゃないかとほとんど信じたりもするのだけれど、膿んだ気持ちというのは季節には持って行ってもらえないのだということを子供じゃないからもう知っている。

近いような

暖かくて静かなところというのは、気持ちがいい。

それが本を読むために用意された場所だというのだからなおさら素敵だ。店内の誰も喋らず、でも誰かのための飲み物や食べ物の支度をする音が常に小さく聞こえていて、たっぷりと注がれたコーヒーからは良い香りがしている。

 

一緒にいても寂しいのなら、正直なところもうどうしたらいいのか私にはわからないのだった。つまらない喧嘩も顔を真っ青にして思い詰めたように声を震わせて話すことも、もうしてもしなくても同じだ。決定的なことは多分もうみんな知ってしまった。

 

猫たちは膝のうえで丸くなる時にくるりと彼らの細いしっぽを私の腕に巻きつける。それは優しくて誠実な行為だと思った。だからそんなふうになりたいと思って私も抱きしめてみたけれど、愛情はおろか殺意に近いような憎しみめいたものも私からは伝えることが出来ないらしかった。

昼間、電気をつけないままお風呂に入る。

湯気が白くのぼって窓の方へ消えていくのを見るのが好きだ。

 

f:id:urimajiro_o:20170306164308j:image

なかなか書けずにいた手紙をやっと書き終えて便箋をしまい、コーヒーのあとに飲んだKOVALというジンがとても美味しかった。夕方、外で一人で飲むお酒はくっきりと強いものがちょうどいい。

すごく大事なことをすっぽりと忘れてしまったような気がする。だから手当たり次第に本を読もうとするのかもしれないと思った。ヒントが何か残っていないか、手探りで近くを遠くをあてもなく、ただひたすらに覗くのだ

f:id:urimajiro_o:20170306055902j:image

タップ

小さな小さな足がタップを踏む。

カーテンの向こう側は猫たちのくすくす笑いが響く場所だ。f:id:urimajiro_o:20170228174853j:image