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まじろ帖

日々のこと。

習慣

なだらかな緑の丘がどこまでも広がり、陶器みたいな色をした牛が転々と草を食む。切り取ったように四角く菜の花がところどころに鮮やかに揺れていた。雲が低く広く立ち込めて、雨が降ったり青空を覗かせたりせわしないのも良かった。TGVに乗ってパリまで移動する三時間、外を眺めたりうとうとしたり持ってきた本を読んだりする。あっという間だ。どこへ行こうとしても。


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結婚して、じわじわと自分がどこにいるのかがわからなくなった。わからないままにただだらだらと生きている自分が嫌だと思った。景色を美しいと思えなくなり、美しいと思う時は決まって胸の中から喉元までみんな腐ったみたいな匂いがした。汚い汚い、と思うと外のものがすべて余計に輝いて見えた。そういうことにももう慣れて、輝くものにただ憧れる習慣だけが身についた。自分の身は何をどうしても醜いのだった。遠くに行くと、そういうものはなかったみたいになるのが嬉しいと思った。