まじろ帖

日々のこと。

今年は寒い、と一年ぶりに会ったオリーブさんが言った。
街の真ん中のマルシェで、オリーブの木で作ったフォークやスプーンやチーズ入れ、ボウルなどを売っている人なので、私はオリーブさんと勝手に呼んでいる。名前は知らない。2年前に初めて話してバターナイフを一本買い、去年はスプーン2本を買った。今年はコーヒーを片手に自分の店をほったらかして近くをふらふらしていたらしいオリーブさんが戻ってきて、私たちを見るとごく普通に手を振り「Bonjour. Ca va?」と言った。「久しぶり。元気だった?」というところから始まり、とにかく今年は寒いね、という話に落ち着く。
「昨日は雪でも降るみたいに空が真っ白だった」
とオリーブさんが言い、そういうふうに説明出来るのはいいことだと思った。きちんと想像できた。白にももちろん種類があるわけで、その中でも「今にも雪が降りそうな空の白」というのを、私たちはお互い知っていたのだ。年に一度、晴れた4月の朝にほんの少し会うだけだというのに。
「starは、日本語では何?」
と言うので「星」と教えた。どうして?と聞いたら、たまたま思い付いた、と笑っていた。
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