まじろ帖

日々のこと。

そしてまたそっと光ったり

「クリスマスマーケット、去年は来なかったね」

とぽつりと言う。風が冷たくて、人の流れが早い。食べ物を売る屋台ばかりが立ち並び、お腹が空いている人には多分ちょうどいいのだろう。温かいワインもソーセージも。

「あれは一昨年?もっと前?」

12月25日の夜に、屋台のほとんどが店じまいを始めた中、その時も早足でここを通りすぎた。

「ココアを飲んだんじゃなかった?」

と首をかしげる。

「お酒じゃなくて?」

「どうだったかな」

どんなコートを着ていたかは思い出せるけれど、手をつないでいたかはわからない。

何一つ忘れたくないと思っていても、こんなにあっさりとこぼれていってしまうのに、忘れたいと思うことは忘れられないこととしていつまでもいつまでもくすぶっている。

それでもいつかはきちんと消えてくれるのだろう。

その時にはもう、消えたことにも気付かないのだろう。


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小さなオレンジの明かりがいくつもいくつも灯っては消え、そしてまたそっと光ったりしている。