まじろ帖

日々のこと。

簡単なこと

山と空と夕方の境目をただじっと見ていると、たとえば10年前の自分が何を考えながら生きていたか思い出せるような気がする。気がするだけだから、実際に具体的な胸に込み上げるような何かをしっかり手にするわけではないけれど、それでもこうして立ち止まれるのはいいことだと思う。

 それにしたって、とマフラーの中に顔を埋める。

もう20年ずっと変えずに使っている香水は、私の体にも髪にも着ている服にも(というよりももういっそ私の鼻に?)染み付いていて、その匂いに突然ハッとさせられることも、周りを見回すこともなくなってしまった。

 一部なのだ。こういうふうに、もう私の。

ユークはわかっているかな。

人を好きになるというのは、そんなに簡単なことじゃない。

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