大事なこと
やけに言葉が胸に刺さる。
大事なものは大事にしなければいけないんだって、そんなのは当たり前のことなのに、耳たぶに新しくひとつ開いた穴が痛むので、まるでとてつもなく難しいことを宿題に出されたような気になってしまう。
その病院ではヘリックスは開けていないと言われたので、耳たぶの出来るだけ上の方に、とサインペンで印をつけた。
「もし印をつけ直したかったら、これで拭き取ってください」
と渡されたアルコール脱脂綿は使わなかった。
印をつけ直すことは出来ないなぁ。
友達のお母さんが持たせてくれたトマトは皮がぱつっとしていて緑のいい匂いがして、綺麗だ。
「トマトが美味しい」
と口に出して言ってみる。大事なことだ。
猫たちが振り返る。