誰も彼もの不在
なかなか暗くならないというのは、不思議だ。
光の粒が、夕方の冷たくなり始めた空気に混じり、少しずつ本当に少しずつ、空を紺色に塗り替えていく。
その光景を広場の端のテーブルに座って、ビールを飲みながら眺めていると、ふいに世界中に誰ももう私が知っている人は存在していないような、全てもう遠い昔の出来事のような気持ちになる。
もう何日も、私はここでこの景色を、誰も彼もの不在を、ただ黙って見ている。
寂しいけれど、同時に信じられないような解放感だ。
泣きながら笑っているような。
強いシャワーを全身に浴びているみたいな。
「どうかした?」
とユークが読んでいた本を置き、顔をあげる。
「どうもしないよ」
ともちろん私は答える。
目の前のあなたが、実はもういなかったなんて、言えるはずがない。