まじろ帖

日々のこと。

分かち合えない

天気の良い午後、古びてもう誰も訪れない静かな教会の裏に落ちている松ぼっくりがあまりに可愛いので、妖精を呼びだせるんじゃないかと思う円陣を作って、一人で遊ぶ。

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目を開けていられないほどまぶしくてからりと気持ちの良い南の日射しの下で、きりっと冷えた一杯のロゼワインがあれば、人生はすべてそれでOK な気がしてくる、それは、南仏の、なんていうか多分マジックなのだ。日常の本当にしょうもない(と言うしかない)腹が立つことも、この人とは一生わかりあえないと思う瞬間も、全部帳消しになる。たぶんユークとしかこの先一生分かち合えない景色を私は今、見ているんだと思う。

この先、私に誰か他にとてもとても好きな人が出来たとしても、その人とは共有出来ないであろう色を、匂いを、ユークが一緒に今、この瞬間に経験していることを不思議に、それから少し単純に重いと思う。私たちは、ここで何をしているんだろう。

眩しすぎる日差し、乾いた赤茶色の土、少し疲れたような人達も、満足にフランス語を話せない私もラベンダーの静かな紫も、絶望という名のレモンを落としたこっくりとしたビールも。

全部だ。

目を閉じるとそれはあまりに単純すぎて、今すぐに泣き出してしまってもおかしくないほど今ここにいることも、明日、目が覚めるのがパリの小さなホテルであることも、みんな変だ。