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まじろ帖

日々のこと。

ノードストロムの匂いを好きなのは

「ママね、ノードストロムの匂いが大好き」
と、ママが言っていたのをふいに思い出した。

北のはじっこの冬は、何もすることがなく、家の前の坂道をソリで滑り降りるくらいしか楽しみはなかった。では夏に何をするのかと言うと、これもまた特に何があるわけでもなく、やっぱり家の前の坂道を転がり落ちて遊んでいた。雪が芝生に変わっただけのことだった。

保育園は、言葉がわからないので嫌いだった。おもちゃをとられても文句が言えなかったから。

時々、デパートに行った。時間があると、スケートリンクに寄ってもらえるので根気よく待った。買い物はつまらないと思ったけれど、よく深呼吸をした。

ママが「いい匂いね」と言ったからだ。

ノードストロムの匂いを好きなのは「私」だと今の今まで思っていたけれど、それはママの受け売りなのだった。