二人で待つような
ユークは、決まったところに行くのが好きな人だ。
春はフランス。
夏は松本、安曇野。
秋だけは決まっていなくて、どこか行ってみたいところがその時もしあれば行く。なければ行かなくてもいい。
冬は年末に伊豆。
泊まる宿も毎回ほとんど同じだ。気に入ったところを繰り返す。ユークは旅行が好きだけれど(昔、バックパッカーで3ヶ月一人でヨーロッパをふらふらしていた人だ)今はもう冒険はしないんだな、と思った。
旅行の帰り際、ユークは
「来年の予約もしていこうよ」
とよく言うようになった。
「うんいいよ」
と答えながら、私は来年の私たちがどうなっているかなんて全然わからないのに、と心のなかでいつも思う。
繰り返される習慣のことをフランス語ではリチュエルという。
ユークのリチュエルには私が組み込まれているんだろう。
青沼駅。
一時間に一本だけの電車を、笑いながら二人で待つような生活が出来ることもいつかその内あるかもしれない。