まじろ帖

日々のこと。

東京の夜は

スタバのピーチインピーチを飲む。

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店員さんが書いてくれた絵を見るなり「桃おしり!」と叫んで笑った。

笑うっていいことだ。
楽しいっていうのは、大事なことだ。

それでもその楽しい場所に、君がいてくれたらどんなにいいだろうと思ってしまう。


K教授の奥さんはやはり亡くなっていた。

今、教授は一人で房総半島の山の中に犬8頭と猫6匹と暮らしている。

私たちは東京駅の地下のレストラン街で会い、ビールを飲みながら何時間も話した。
「喪失は、すべての色を失うことだったよ」
と教授は言った。
「じろ、びっくりするかもしれないけれど、見えている世界がもう違うんだ」
と。
「もっと自分が日本語を覚えれば、彼女と日本語で話すことが出来たのに」
とも言った。仕事をすべてキャンセルし、付きっきりで看病し、最期は病院ではなく家に戻り、愛する動物たちの側で彼女をそっと看取った。それでも教授は後悔していて、だけど誰かを亡くす時に悔いの残らない別れなんてきっとないのだろう。

何度でも繰り返し取り出して慈しむことが出来るのが思い出のいいところだ。時間をかける内に美化されていくだろう。都合の悪いことは忘れてもいくだろう。

でも、私たちが覚えている限り、亡くなった人たちは鮮やかなままだ。

安心した。

その晩、何杯めかのビールを飲み干し、途中から合流したユークと一緒に高速バス乗り場まで教授を送って行った。
「東京の夜は騒がしいね」
と教授が笑った。