まじろ帖

日々のこと。

闇が深い

羊羹の器にあまりにもちんまりと可愛らしく収まるので感心する。タイムは鼻を近づけるととてもいい匂いがする。

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大学時代のK教授からメールが来た。
奥さんの体調が芳しくなくしばらく日本を離れるというのが最後のメールで、オーストラリアへ戻るのかそれともどこか違うところへ行くのかもわからず、それから一年近くあっという間に日々が過ぎてしまった。

今朝来たメールには最後に会ってからたくさんのことがあった、としか書かれていないので詳しいことがわからない。

教授は変わった人で、いつも少し困ったような優しい表情を浮かべて静かなとても綺麗な声でオーストラリア文学のテキストを読んだ。オーストラリアワインラグビーと家族を心から愛していて、動物が殺されることに心を痛め、ある日ベジタリアンになった。千葉の山奥に家を建てたり、突然タスマニアの小さな町に古い幽霊屋敷みたいな家を買って犬を拾い、なんだか詳細がよくわからないホームレスのような人を部屋に住まわせて家と犬の管理をお願いしたりしていた。タスマニアに一度来てごらんと言うので卒業旅行先はタスマニアに決めた。タスマニアには、不思議な生き物が多かった。車で道を走っているだけでも、町のはじっこの墓地で墓石に刻まれた文字を眺めているだけでも楽しかった。一緒に旅行した友達はウォンバットの赤ちゃんに服の袖を噛まれて穴があいた。夜になると暖炉のまわりでお酒を飲んだ。ふと庭の方に目をやると、何も見えないくらいの暗闇だった。ずいぶんと闇が深いところだと思ったけれど、静かでとろりとした心地好い闇だった。

日本に戻ってきているのなら、近々会えるのかもしれないけれど、たった三行のメールをどんな状況でどんな気持ちで書いてくれたのかがわからない。どうしても三行しか書けなかったのだとしたら一刻も早く会わなくては、と思う。