まじろ帖

日々のこと。

収骨室の中で

朝、起きると本当に嬉しそうな顔をして、目に映るものぜんぶが彼の幸せであるかのように尻尾を振っていた。
「楽しいね」
と声をかけるとくねくねと身をよじって喜んでいた。

f:id:urimajiro_o:20150716165147j:plain

パディントンの頭蓋骨は小さくてすべすべしていてとても綺麗だった。腫瘍のせいで骨が黒ずんでしまっているんじゃないかという心配はまったくもって外れていた。
「骨になっても可愛いねぇ、この子」
と言って私たちは収骨室の中で泣き笑いをした。

昨夜と今朝はたくさんの人がかわるがわる会いに来てくれて、花束をくれた。あっという間にパディの周りは花で埋め尽くされ、お客さんたちは、
「パディちゃん、照れちゃうわね。こんなに皆が急に来て」
と言って涙ぐみ、それでもやっぱり皆もちょっと笑った。

火葬の前に「足形をとるサービス」というのがあって、前足の肉球にインクをつけてぐぐーっと画用紙に押し付けてスタンプにしてくれた。パディはシャンプーやドライヤーの時に足をつかまれるのが嫌いでいつも渋い顔をしていたので、それを思い出して泣きながら吹き出してしまった。
「噛みつくんじゃないかと思ったわ」
と、ママも後から言っていた。

火葬した後、しっぽの骨と足の骨の小さなものを一本ずつ分けてもらった。
「ネックレスにも出来ます」
と言われたけれど、たぶん首からかけることはないので、普通の銀色のケースを選んだ。

家に帰ってきてケースから骨を取り出し、手の平にのせて眺めてみた。
見れば見るほど立派な骨だ。
パディントンは大した奴だ。

寂しさと悲しさの波はこれからまた幾度もやってくるだろうけれど、その度に私は彼の骨を眺め、和らいでいく寂しささえも愛しく思うに違いない。