まじろ帖

日々のこと。

未来さえも思い出せる

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「喧嘩らしい喧嘩もまだしたことがない二人ですが、この先長く一緒に過ごしていればそういうこともあるでしょう」とタキシードに身を包み、すらりとしたKが言った。


辛かったことや苦しかったこと、悲しくて泣いたことは、輝く物語の中に存在しない。


昔、結婚式がつまらなかったのは、それまでに起こった色々なごたごたを全部無視してなかったことにして繕って良いところだけを抜粋しました、という会の何が面白いのかさっぱりわからなかったからだ。


でも今は、それが純粋に楽しいと思う。
綺麗で温かくて優しいものを、集まった人々がただそっと受けとる会だ。


子どもたちは興奮したり退屈したりする。
若者は時に鼻白んだり憧れたりし、
歳を重ねた人たちは、懐かしむ。安心する。


まるで自分がとても年を取ったおばあちゃんになっていて、まだ始まっていない二人のこれから先の未来さえも思い出せるような気持ちになった。


ロウソクの向こうの少し緊張した二人の笑顔を私は本当はずっと知っていた。Yが幸せそうなことが嬉しい。