まじろ帖

日々のこと。

フランス

手放して

ありふれた景色を見て、喉の奥がぎゅっとなる。建ち並ぶ古いアパルトマン。カーテンのない窓から見える高い天井。楽しそうな話し声。音楽。カチャカチャと鳴るお皿やグラス。 この街へ来るようになってからもう何年かが経ち、物珍しさはなくなった。ここに住…

瞬間だけ

たとえば恋をして、これがもう全部最後だと思ってもどんなにそうであって欲しいと願っても、その続きが必ずあるということが昔はひどく怖かったけれど、今はそれらは救いのように思える。叶わないから足りないと思うのは間違いだ。見たものすべてを私は深く…

習慣

なだらかな緑の丘がどこまでも広がり、陶器みたいな色をした牛が転々と草を食む。切り取ったように四角く菜の花がところどころに鮮やかに揺れていた。雲が低く広く立ち込めて、雨が降ったり青空を覗かせたりせわしないのも良かった。TGVに乗ってパリまで移動…

パレードの終わり

マルセイユに食事をしに出かけ、バスで戻ってくるとエクスアンプロヴァンスの街ではちょうどカーニバルのパレードが始まったところだった。子どもたちがハロウィンのように仮装をし、ピエロがカラフルな紙吹雪の詰まったパックを売り歩く。ミラボー通りの人…

朽ちて

村は小高い丘を囲むようにして作られていて、家々を眺めながら坂道をのぼっていくとほとんどの村の頂上には古い教会があるのだった。それらのほとんどはもう使われなくなっていて、朽ちていく建物の周りを草や花が覆い、のんびりとした猫がいる。今も昔も、…

今年は寒い、と一年ぶりに会ったオリーブさんが言った。街の真ん中のマルシェで、オリーブの木で作ったフォークやスプーンやチーズ入れ、ボウルなどを売っている人なので、私はオリーブさんと勝手に呼んでいる。名前は知らない。2年前に初めて話してバター…

マネージャー

燦々と陽がそそぐ公園で、男の子達は楽しそうにバスケをする。バスケに全然詳しくない私にさえ、彼らがあまり上手でないということがわかり、それでも目が離せずにじっと見ていた。マネージャーみたいな気持ちだ。

感無量

パリのオーナーの本店に行く。お店の内装も並ぶパンもみんなとても綺麗で、オーナーが「イラッシャイマセー!」と覚えた日本語を披露してくれたことも、可愛くて、なんだか感無量だ。

お茶

パリの友達に会う。 ユークはその辺をぷらぷらしてくると言うので、二時間後に待ち合わせ。ラデュレでお茶をする。 ちゃんとフランス語を話せるかな、とか英語もあやふやだったらどうしよう、とか。ドキドキしながらのお茶だ。

ちびちびしていても

サッカーの試合が観たいというユークに付き合って、夕食の後に試合を放送しているカフェかバーを探して歩く。「生ビールを」 とカウンターで注文し、席につくと私にはもうほとんどすることがない。サッカーはユークが好きだからなんとなくいつも付き合って見…

離せない

可愛いというよりは怖くて、目が離せない。この通りを歩く時はちょっと緊張してしまう。 絵がなくなったりはしないだろうけれど、たとえばちょっと顔の向きが変わったりはするかもしれないから。

誰も彼もの不在

なかなか暗くならないというのは、不思議だ。光の粒が、夕方の冷たくなり始めた空気に混じり、少しずつ本当に少しずつ、空を紺色に塗り替えていく。その光景を広場の端のテーブルに座って、ビールを飲みながら眺めていると、ふいに世界中に誰ももう私が知っ…

知らない物語

初めての村でもひょいひょい歩いて進んでいける。スニーカーの履き心地が良くて、リュックには水がきちんと入っていてすれ違う人に挨拶さえ出来ればたいていはOKだ。ここはどんな村? どんな人がいるのかな? おいしいワインはあるのかな?そんな気持ちで村…

時計を

バスは一時間に2本、たぶん来る。 忘れられていなければ。 山の真ん中にひっそりとたつ古い朽ちたような教会とそれを囲むようにしてつくられた村だ。バス停は高いところにあるので、村を見下ろすことが出来る。 「こういうところに住めるかな?」 と話す。…

可愛い顔

歩いている途中、いろんなものが目にはいる。 植物の色も違うし、建物は古くごつごつと冷たい石だ。パン屋さんはどこも覗いて匂いを嗅いでみたい。マルシェに並ぶ野菜の明るい赤、緑、黄色。一本裏の通りでこんな可愛い顔を見つけて大笑いしたりもできるけれ…

リゾット

マルセイユの港には、たくさんのレストランがひしめき合っている。どこのレストランも店の前に看板を出し、魅力的な料理やデザートやお酒を書き散らす。マルセイユといえば、ブイヤベース。 ところが、ブイヤベースがあまり好きではない私は、読みにくいフラ…

等しく距離を

駅から教会のある丘までどんなに短く見積もったって40分は歩いた。しかも最後はこれでもかというほどの坂道を登った。サンフランシスコかリスボンか長崎かというような、日のあたる静かで埃っぽく、延々と続く坂道を。強い風が吹く、海も街も一望できる圧倒…

マルセイユ

マルセイユまでのバスがあるというので、乗ってみることにした。 マルセイユと聞くと治安が悪いとか危険だとかすぐに言われるので、内心ドキドキしていたけれど、行ってみたらそこはとても面白そうな街だった。駅について、階段の上から街を眺め、あの遠くの…

天気

エクスアンプロヴァンスの天気は良い。 セザンヌが生涯愛し、描き続けたサンヴィクトワール山は今日も綺麗だ。

混ぜ合わせた

23時まで営業している食料品店があって、そこに行けば缶のパナシェを買うことが出来る。ビールを何かで割った飲み物というのがけっこう好きで、例えば韓国料理屋で、ビールとマッコリを頼んで勝手に割って飲んだりする。パナシェはビールとレモネードを合わ…

ピーマン

ピーマンハンバーガー。メニューを見てどんなハンバーガーだろうと思ったら、なかなかごついのがやって来た。

絶望という名前

絶望という名前のビールは、南仏らしくないなぁと思う。こんなにからりと晴れてあちこちに清潔なラベンダーやらハーブやらの香りが満ちていて綺麗な街なのに、広場のカフェのビールはデスペラードだなんて、変だな。4日連続で夕方になると同じ店に通い、デ…

映画館

観たかったジャングルブックの実写版がちょうど上映されていたので、ホテルの近くの映画館へ。午前中は6.7ユーロで観ることが出来るので、安いなぁ。子供たちに混じって初フランス映画館を楽しんできた。フランス語吹き替えなので、会話は半分もわかったかど…

味方

電車での長時間移動の強い味方。 ニースからエクスアンプロバンスまでの三時間。本当はちょっと周りの人が話す言葉を聞いていたい気もするけれど、いつも通りの音楽を聴きながら流れていく見慣れない景色を見るのも好きだ。この世界史の本は、面白い。

ニースから電車で20分ほどのアンティーブへ行く。ピカソの美術館があり、旧市街はくるくるといりくんだ道が続く。ピカソの描くアンティーブの海。

みっしり

今回の旅行の私の目的は、パン屋さん巡りをしてみること。というわけでマルシェのパン屋さんでクロワッサンやパンオレザンを買ったり旧市街のパン屋さんでサクリスタンを買ったりして、しょっちゅうぱくぱく食べている(もちろん食事は別腹なのだ)。マルシ…

チケット

今年もそろそろフランス行きのチケットを予約する時期がきた。何の本を持っていこうかということばかり考えている。ユークが途中から合流するため最初の何日かは私一人だけなので、本気で選ぶ本が必要なのだ。

最後の最後にして

トゥールーズの街から帰る日がやってきた。 天気が良く、でも風の冷たいとてもいい街だった。この旅で二枚買ったステッカーをスーツケースに貼る。 空港までのバスに乗ろうと駅へ行く。チケットブースには男の人が一人いて 「今日はストでバスは動かないよ」…

見逃さずに

歩いていたら教会にたどり着いた。人が全然いなくて静かで綺麗だ。 ユークと二人でぼーっと天井を見上げていたら一人のおじいさんに声をかけられた。 「興味があるかい?」 と多分聞かれている。聞かれているんだろうな、とはわかるんだけど上手に答えられな…

グリフォン

散歩の途中、グリフォンの噴水を見つけた。姿勢が良くてかっこいい。 グリフォンは上半身が鷲、下半身がライオン。そのグリフォンと馬の間に生まれたのがヒポグリフで、上半身が鷲、下半身が馬ということらしい。ヒポグリフの方が走るのが速そう。 トゥール…

エッフェルさん

私は東京タワーが好きだし、だからエッフェル塔ももちろん好きだ。雨の日や夜、真夏の午後や雪のちらつく日、好きな人と並んで一緒にもエッフェル塔を眺めた。上までのぼったことはずっと昔に一度しかないけれど、上階へのエスカレーターが斜めに動くのが楽…

頭ではわかっている

市場の端っこにはこんな扉がある。 重い扉だし、非常用通路の図みたいなのも貼ってあってなんだかよくわからないけれど、でも確かにこう書いてあるのだ。RESTAURANTSおぉ。それだけわかれば十分だ。de midiということはたぶん、正午から。 そして、市場で売…

誰と楽しく

トゥールーズの街の中には大きな屋内市場がある。中でも一番多いのはお肉屋さん。次に多いのが魚屋さん。それからチーズ屋さん。それ以外には普通のお惣菜のお店とかアジアン総菜のお店とか、朝から何人もの男の人たちががやがやしている立ち飲み屋さんとか…

書こう

旅行が終わると、必ずアルバムを作ることにしている。まだ一番最初のパリでの乗り継ぎ辺りなので、完成までここからどれだけ時間がかかるんだろう。ちなみに去年は同じような長さのフランスのアルバムを作るのに4ヶ月かかった。フランスの何もかもが今はま…

同じ分量のポテト

お腹がぺこぺこだと、こんなピザを一枚ぺろりといけてしまう。ユークは途中で無理だとあきらめかけたけれど、私の食べっぷりに「負けられない」と思ったらしい。夜までずっと「お腹いっぱい…」と言い続けていた。 でも今日のメインは、L'ENTRECOTEというレス…

あまりにも軽やかだ

広場に、鳩にとても好かれている人がいる。いい天気で、公園にはたくさんの人が集まっていた。サングラス越しにも、世界はあまりにも軽やかだ。眩しい。もうすぐこの旅も終わります。

オーナー

この売店の人の犬かな?メニューを書くところを後ろからじっと見ていて可愛かったのでぱちり。振り向かれてしまった。実はこの犬がこの売店のオーナーで、今日のメニューについての指示出し中なのかも。

外は

ホテルの下にあるアイリッシュパブに行く。壁の上の方に設置されたテレビで流れるサッカーの試合を、おじさんたちがのんびりビールを飲みながら眺めている。外は21時過ぎとは思えない明るさだ。私はサッカーに全然興味がなくて「ねぇ、あのキーパーってもし…

ふいに視界が

コルドシュルシエルの下のバス停から反対側へ歩いていくと、細いハイキングの道がある。 看板の先に続く山道。「行ってみようよ」 とユークが言う。 「村の全景を見てみたい」 と目を輝かせている。どちらかと言うと私はあまり歩くのが得意ではないのだ。 「…

猫に話しかけたり

尋常じゃない親近感を感じて慌てて写真を撮ってもらう。この顔、夜中になったら絶対大笑いしたり猫に話しかけたりしていると思う。坂田靖子の漫画に出てきそう。

その村に暮らす人々

コルドシュルシエル。 アルビからのスクール(路線)バスを降りて左に少し歩いて行くと、この村の入口につく。二つの建物の間には石畳の急な坂道。天空の村がここから始まる。時計塔の下をくぐり、坂道を登る。 両隣にはおもちゃ屋さんや洋服店、お土産屋さん…

スクールバスに近い

朝、バス停にはたくさんの学生がいた。 この街にこんなに若い人たちがいっぱいいたのかと驚く。 みんな多分色々なところからバスに乗って来てここで友達と待ち合わせして学校へ行くのだろう。 私たちの今日の行き先は、コルドシュルシエル。天空の村とよばれ…

嘆きと感謝と

行った先の街に教会があると、ふらっと立ち寄る。 教会はみんな静かで冷たくて黴臭い。空気は信じられないほど古く、なのに清々しい。 どの街のどんな教会にも人々の長い長い祈りの声が満ちていて、私たちの耳にはもう聞きとることのできない音となって高い…

跳ねてみる

夜の少し手前がやってきた。小さなレストランで食事を終えて外に出ると、レンガ造りの建物がみんな夕焼け色に染まっていくところだった。最ももうとっくに20時を過ぎているのだから夕焼けというのはおかしな表現だけど。サントセシル大聖堂のそばの坂道を下…

ぺたぺた

スーパーでニベアの隣にあったこのクリームが安かったので買ってみた。匂いはニベアと似た感じ。特に香りが強く残ることもなくよくのびてなじむ。シャワーの後、全身にぺたぺたとたっぷり使える。これはいいかも。

150周年

スーツケースをトゥールーズの駅のロッカーに預け、マタビオ駅から電車で一時間ほどのアルビという街へ。トゥールーズの駅のロッカーは、担当のおじさんがまったく英語を話さない人だったので、24時間以上荷物を預ける場合の追加料金について確認するのに…

元通り

熊とピーチのアイスクリーム。冷たくて甘いものを食べると色々なことのやり直しがきくような気がしてくる。力が湧いてくるみたいな感じ。コーンまで食べ終えてしまうと、残念ながら元通りなんだけど。

舌を噛みそうな名前

「とても大きな骨董市が出るから行ってみるといいわ」 と言われ、日曜の朝のバスに乗り、リルシュルラソルグという舌を噛みそうな名前の町に行く。町の真ん中を運河が流れる古くて小さな町だけど、日曜日になると運河沿いに所狭しと店が広げられて、大勢の観…

花粉症

日本を出るとき「花粉症の薬はいらないかな」と思い、持って来なかったのが悔やまれる。海外でくしゃみ鼻水、喉のイガイガとくればそれは風邪だとずっと思っていたし、実際私はよく風邪をひくので、風邪薬や頭痛薬、喉の薬などはたくさん持っていたのだけれ…

あるはずの

街の真ん中にぽんとメリーゴーランドがある。 缶ジュースを飲みながら(ユークはチェリーコーク。私はあればパナシェ。なければピーチアイスティー)眺めていると、小さい子どもたちはよく乗っている。大人はほとんど乗らない。子どものころ、私はあまりメリ…